さくさくさく。
十和野葵 著/もの・かたり。企画・脚本・編集/978-4905295570/200ページ/小説/1,200円(税別)/2020年1月刊
太宰治が死の前年に発表した『フォスフォレッスセンス』。二百字詰め原稿用紙三十枚にも満たないこの小品に魅せられた著者が、太宰治生誕110周年の2019年、すべての太宰ファンのために書いた、もうひとつの『フォスフォレッスセンス』物語。
わたしは月に一度、日向(ひなた)さんの家に行く。
「男の人と女の人は、どういうふうにしたらいちばん親密になれるのかしらね」
「こうして手を繋ぎあっているのがイチバン幸せかもしれませんね」
わたしは、いつも心のどこかで探している。別のやり方を。
そして、ある秋の日、わたしが見つけてしまったものとは。
東京近郊の古都K市を舞台にした、わたしと日向(ひなた)さんの、12ヶ月限定の恋物語。
でも、どうして一年? たぶん、あと一年ぐらいはわたし、やっぱりここに通い続けるだろうし、そしてあと一年ぐらいが、わたしのモラトリアムを終わらせるにはちょうどいい期間だと思うから。
毎月、ふたりの間で交わされる、花とブンガクと、夢と現実と「あの世」のお話。
太宰治、堀辰雄、中原中也、内田百閒他、大正・昭和の文士たちの言葉が今よみがえる。
春夏秋冬、毎月一篇ずつ。古都K市のブンガク観光ガイドとしてもお役立てください。
(解説:もの・かたり。)