静かな一日/桜の園
矢内原美邦 著/224ページ/戯曲/2,000円(税別)/2022年8月1日刊行
矢内原美邦戯曲集I「静かな一日」「桜の園」
2011年3月11日の東日本大震災を受けて抱いた「演劇になにができるのか」という自問を起点に矢内原美邦の戯曲作「静かな一日」は、夫婦の日常会話と、そこに突如襲いかかる災害。そして食い違っていく2人の会話から、突如大切な人を失う喪失感や孤独、かつて流れていた幸せな時間を描き出し、美術作品の家々とそこに襲来する震災が「日常」の尊さや儚さを立ち現せさせる物語。
チェーホフの名作『桜の園』をベースに矢内原美邦が独自の視点で描いた戯曲作品。1本の老木をめぐる3つの物語。時代の転換点に浮かび上がる多様な思考。この木を伐るか、否か。そこにはそれぞれの主張があり、賛成があり、反対があり、いくら言葉を費やしても果たしてそこに正解はない。言葉は意味を失い、時間を失い、どこか遠くのほうをさまよいはじめる。もう誰も信じない…君が「そうだ! 」というまえに、私はその言葉の意味をかっさらってみせる。不確かな未来へと漕ぎだす私たちに送る物語。